視点

家計消費支出の動向と消費税軽減税率検討の行方(平成27年5月)

総務省が今月発表した家計調査によると、3月の2人以上世帯の実質消費支出は前年同月比10・6%減少し、現在の形の統計となった2001年以降では最大の下げ幅となったとのことである。昨年3月は消費税引き上げ前の駆け込み需要で7・2%の増だったということなので割り引いて考える必要はあるものの、昨年5月の8%減を筆頭に消費税増税後12ヵ月連続でのマイナスが続いているということは、消費増税が消費支出に与える影響の大きさを如実に示すものに他ならない。4月以降の消費支出が回復軌道に乗ることを期待してやまない。

自民、公明両党は1月26日の与党税制協議会において『消費税軽減税率制度検討委員会』を設置し、29年4月の消費税再引き上げに向けて生活必需品などの軽減税率を導入するための検討を本格化しており、今秋の税制改革大綱に盛り込む方針とのことである。

最近の報道によると、この検討委員会では、昨年6月に与党税制協議会が公表した食料品に軽減税率を導入する場合の8つのケースのうち、「酒を除く飲食料品」、「生鮮食品」、「精米のみ」の3つのケースを主な検討対象に議論することになったとのことである。自民党は、税収の落ち込みや事業者の混乱を抑える必要があるとして対象品目を絞り込むべきだとしているのに対し、公明党は、消費税の引き上げに伴う国民の負担感を軽減するため幅広い品目に適用するよう求めているとのことである。自民党サイドは、今回は「精米のみ」として様子を見た上で、税率が10%を超える段階で対象を広げたいと考えているのではないかとの憶測も流れているようである。

いずれにしても、今回の税率引き上げによる消費支出への影響を見ると、生活必需品とりわけ食料品への軽減税率の導入は避けて通ることはできないのではないか。消費増税が10%で打ち止めというのであれば、ごく限られた品目を対象とすることで足りるであろうが、そうでないとすれば、今後の税率引き上げを容易にするためにも「酒を除く飲食料品」(富裕層も同様に軽減されるので非効率というのであれば、一定額以上の外食は除外しても良いのではないかと思うが)への軽減税率の導入が必要なのではないだろうか。最近の財政危機に対応してヨーロッパ諸国が速やかに消費税の引き上げを行えたのも、国により内容は異なるものの生活必需品に対する軽減税率制度が確立していることによるところが大きいのではないだろうか。もちろん、様々な問題が指摘されていることも事実であるが、そもそも完全に問題の無い制度などあり得ないのではないか。消費税は社会福祉のためといわれるが、生存を支える食料品をできるだけ安価に供給することは社会福祉の原点ではないだろうか。低所得者には還付金制度を仕組めば増税の悪影響は避けられるとの説もあるが、所得の捕捉の精度の問題はさておいても、後で還付されれば消費支出は減少しないのであろうか、消費者心理としては、財布から出して払う時点で支出するか、節約するか判断されるのではないだろうか。前回平成9年の消費税率の引き上げ、今回の引き上げが消費支出、景気動向に及ぼした影響を充分踏まえた判断をお願いしたい。因みに、前回の2パーセント引き上げ時は、物価と所得も上昇していたにもかかわらず1990年の消費税3パーセント導入時を上回る買いだめと反動減が生じていたが一年後にはほぼ元に戻っている。次回はどうであろうか。引き上げの先延ばしに伴い経済条項を削除したことから、2%一度に引き上げるものと理解されているが、景気への影響をできるだけ少なくするには内閣参与の浜田宏一教授が指摘されているように1パーセントずつ引き上げるという方法も十分検討に値するのではないだろうか。

また、改めて指摘するまでもないことではあるが、消費税の目的は社会福祉の財源確保であって、省エネ税制のように税制そのものによって政策目的を実現するものではない。したがって、軽減税率の対象品目の線引きに当たっては、それによって品目間の競合関係を変化させるようなことは厳に回避していただきたいものである。

 全菓連専務理事・山本領